・競りの妙 その1
しばらく前の話です。あるオークションに茶碗を出品しました。
茶碗と言っても大した品ではありません。交換会の買値で1万円…。陶芸家というより茶道具専門の職工が作った品で、楽茶碗に僧侶の箱書がついた「お馴染みの品」。骨董好きなら、頭に品が浮かぶ方も多いでしょう。茶道の初心者が稽古に使う、あるいは日常生活で軽く抹茶をいただくには十分かな、といった茶碗です。
最初、私はこの品を買う気がありませんでした。勿論、交換会ですから値段が安ければ買うということなのですが、これを出品していた某古美術商が知り合いのためお付き合いで声を出していたところ、弾みで落札してしまったのです。テンポ良い競りに巻き込まれ、「1万円!」というちょうどの数字を出したのが運のツキ。競りというのは、大抵キリの良いところで止まります(※もしオークションに参加される機会があれば、キリの良い数字が自分のところに来るよう・あるいはキリ良い数字の少し上に出るようオークショニアの動きを見つつ札を挙げると良いでしょう。多少なりとも、上手く落とすチャンスは増えると思います)。
ちなみにこの茶碗。僧侶の書付もありますし、古物の相場で1万円はそれほどおかしくありません。ただ、先日の記事に書いた通り、業者の仕入れる価格と一般の流通価格~ネットオークション等の相場は接近している状態。相場通りに買っしまっては利益が薄い、もしくは0に近くなるケースもありえます。特殊な品ならともかく、よく見かけるタイプの茶碗では尚更でしょう。「卸売価格」「業者価格」で流通していると思われた交換会の品も、以前に増して厳しく選ばないと利益を出しづらくなってきたのです。
落札してから「しまったな」と思いましたが、まあそこはお付き合いの1万円。物自体、ありきたりとは言え悪くありませんし、商売にならないまでもラーメン代くらいは出せるか、または損しない程度には売れるかなと思っていました(これでは本当に商売でも何でもありませんが…)。ともかく、勢いで競り落とし失敗することはたまにありますし、大した額でもないのでそれほど気にすることもなかったのです。
それからしばらくして、私はこの茶碗をネットオークションへ出すことにしました。
※その2に続きます
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