・オークションで失敗…
先日、ある一般参加型オークションで失敗をしてしまいました…。
あるオークションに、現代美術の、しかもちょっと珍しい商品が出ていました。珍しいと言っても「高価」「希少価値がある」というより「ややマイナー」と言った方が正確かもしれませんが、私はその品が欲しかったのです。
このオークションはコンテンポラリー作品が比較的安く落とされる傾向にあり、たまに儲かる物を拾える所でした。そして、カタログをよく見ると同じ感じの現代美術品がポチポチ出品されています。当日私は出掛けることにしましたが、実はその手の品を扱っていて懇意にしている美術商と「時間があったら飲みに行こう」という約束をしていたため、「○○オークションで面白い物が出ますよ。終わったら飲み会として、行きませんか?」と誘ってみることにしたのです。
会場で待ち合わせ、手続きして着席。オークションが始まりましたが、出品物の多くは日本画や洋画です。好調に売れて行く品をボーっと眺めながら、1時間以上経ったでしょうか? いよいよ狙っているコンテンポラリー作品の出番がきました。
「LOT○○番。1万円、1万円…」。成り行きで出されたこの商品、誰もパドルを挙げません。やはり、このオークションではちょっと浮いている品だったのです。「チャ~ンス!!」。パドルを挙げようと準備すると…。
なんと、隣に座っていた私の連れがスッとパドルを挙げてしまったのです。もとより彼はこの手の品に詳しい人間。美術商の交換会で知り合い同士競り合うことはありますが、私から誘った上に親しい隣同士で競り合うわけにはいきません。泣きそうになりながらパドルを挙げるのを控えましたが、結局スタート価格に1ビットした1.5万円という格安価格でその商品は連れに落札されてしまいました。
ちなみにこの品。ネットオークションで右から左に転売し、簡単に十数万円儲けたそうです。落札価格が激安なので、まあ当然の話でしょう。現代美術のやや狭いところにある品とは言え、需要のない品ではありません。むしろ、この手のやや狭い範疇にある品だからこそ「欲しい」と思う人が必ずいるものなのです。
まあ、自分で蒔いた種。一杯飲みつつ話のネタにでもするかぁ、と思っていると「スミマセン、今日これから打ち合わせが入りましたんで、お先に失礼します」「…」。目的であったオークションでの落札、飲み会とも流れてしまい、結局私は丸1日を無駄にしてしまいました…。
私は何か良い情報があると、信頼できる仲間には結構話してしまいます。今回はそれによって目の前のお宝を買い損なってしまったわけですが、実は登場してもらったこの美術商。ここ数年本当にお世話になっていて、仕事上ずいぶん助けられているのです。いや、こういうことがあるからこそ、彼は私に良い情報や取引の話を持ち掛けてくれるのかもしれません。これは、この仕事に限らず言えることなのでしょうが、「儲かる情報…」と思い黙っていると、他者からの話も入ってこない。逆に損なようでもオープンにしていると、相手から有益な話や取引が飛び込んでくる…。
勿論、そこに信頼関係がなくてはなりませんが、仲の良い取引相手である彼の利益は、同時に私の利益であったのかもしれません。
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コメント
信頼関係があってこそのギブアンドテイクとでもいうのでしょうか、ですから失敗ではないのですよね。
目先ではなく長い目で見ると云う事は重要な事なのでしょうね。
業者の方とお客との関係にも当てはまりますよね。
Posted by: tokusa様
コメント有難うございます。
この記事のタイトル、最初は「オークションで失敗するも…」とか、「オークションで失敗」の後に続く言葉をいろいろ考えていたのですが、結局まとまらずにそのままつけてしまいました…。
ただ、tokusa様が書いて下さったように(あるいは、文章の最後に書いた通り)、必ずしもこの出来事は「失敗」と言えないのでしょう。良い話を教えたり、相手を儲けさせるためこちらの利益が薄い仕事を引き受けても、結局は自分に利益が返ってくるケースも多いです。
Posted by: @bijutsubaibai