・続 競りの妙 その3

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 声が掛からず、オークション会場をちょっと間の悪い空間にしてしまった茶碗。しかし、競りは続けられました。

 大抵の場合、オークションでパドルの挙がらない品は「それでは引きます」と言って不落札の扱いとされます。が、場の雰囲気やタイミングというのもありますし、いろいろ裏事情がある場合もあるのでしょう。「極端に安くは売りたくない。でも売り切って欲しい」。出品者からこんなリクエストが出ていたのかもしれません。ともかく、この茶碗は引かれずに競りが続けられたのです。

「うーん、お声がありませんね。では、5万8千円でいかがでしょうか? 5万8千円…」。はじめ7万5千円だった茶碗が6万円、そして今度は5万8千円…。「競り下がる」という言葉は変ですが、競りにおいて上がるはずの値段がドンドン下がってしまうという、ちょっとした「珍現象」が見受けられました。

 もっとも、前回の記事で書いた通りこれはたまに起きること。手頃な価格の成り行き品を1万円くらいから始めて全く手が挙がらず、「それでは3千円から始めましょう」と振り直したところ結局競りが発生して1万円になってしまう~場内から笑いが漏れるといった光景はよく見受けられます。しかも、場合によっては競りの勢いで最初に提示した1万円を超えてしまうこともあるのですから、「競り合う」という行為がいかに値を上げる作用を持っているのかお分かりいただけるでしょう。

 この茶碗。ここまで下がったのなら私が買ってもよかったのですが、リズムの悪い競りになってしまい何となくパドルを挙げづらい雰囲気になっていました。それに、どこまで下がるのか、どういった収束をつけるのか、ちょっと意地悪な興味もあったのです。

 すると、オークショニアが何やら計算するような仕草を見せました。
※その4に続きます

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