・続 競りの妙 その4

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 売れない茶碗に対するオークショニアの計算するような仕草。ここには、ちょっとした事情が隠されています。

 皆さんもご存じの通り、オークション会社というのは手数料から収入を得ています。税や諸費用は抜きにして、落札手数料15%のみ掛かるとし考えて下さい。私が、茶碗なり骨董品を「60000円リザーブ(最低落札価格)でお願いします」と出品したとしましょう。この60000円とは、私の手取りではなくオークションのハンマープライスでということなのですが、全く競らずにリザーブ価格で落札された場合、私のもらえる金額は60000円から15%引かれた51000円です。また、落札者にも15%の落札手数料が掛かりますから、支払い金額は60000×1.15=69000円。オークション会社は、出品者と落札者の双方から9000円ずつ~計18000円の利益を得られることになります。

 手数料や競りに関してはオークションに明記されたルールがあり、勿論その通り行われます。しかし、オークション中、もう少し安くすれば売れるかもしれない場合、あるいは、落札されなかったものの終了後「もう少し安ければ買う」と交渉が入った場合、本来売るべき価格の60000円を下回っても、オークション会社の利益を圧縮することにより売買を成立させることができるのです。

 上記の例で言えば、私は最低51000円もらえるなら出品者サイドとして何の問題もありません。オークション会社がルール通り15%の手数料を得ようとすれば、最低でもその品は60000円で落札させる必要があります。が、オークション会社が得るべき手数料を下げてしまい、利益を圧縮すれば最低落札価格の融通が利くのです。不落札に終わった競りの終了後に55000円なら買うという人が現れて取引を成立させた場合、何も言わず私からは手数料4000円(本来9000円)、落札者からは通常手数料の15%(8250円)をもらえば、出品者・落札者とも本来得るべき(支払うべき)価格で取引が成立しているのはお分かりでしょう。

 いや、出品者から入る手数料が0%~つまり、私に支払うべき51000円で売ってしまっても、落札者からの手数料があるためオークション会社は利益を出すことができます。さらに、もっと言ってしまえば、私がオークション会社から支払ってもらえる最低価格の51000円以下で落札されてもOK。ちょうど50000円で取引が成立したとしましょう。出品者に最低51000円払う約束ですから、オークション会社は1000円損をしてしまいます。が、落札者から50000円×1.15=57500円もらえるのですから、57500-51000でまだ6500円の利益。最低落札価格で売った場合に入ってくるはずの手数料、両者15%の18000円からは大きく下回るものの、「不落札」ではなく一応の成果を出すことができるというわけです。

 さて、値段を下げても声の掛からないこの茶碗。この後どうなったのでしょうか?
※この話の「その5」は『裏美術売買』に掲載します。

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