・豪邸にあった品は…
数年前の話です。知り合いの古美術商が、ある豪邸内に置いてある美術・骨董・調度品の処分を頼まれました。
この手の仕事は当れば利益も大きいのですが、ハズレのケースも少なくありません。依頼者は、一般的な知名度はどうかわかりませんがある分野の有名人で、その方の代理人が頼みにきたそうです。
家は凄いお屋敷らしいのですが、金回りが悪くなったらしくすぐにでも手持ちの品を現金化したいとの事。頼まれた業者も期待して出掛けたそうですが、下見に行ったあと話を聞いてみると黙って商品のリストを渡されました。それを見ると…。
剥製(複数)、大きな花瓶(陶芸家の作品や骨董ではなく、インテリアの量産品)、つまらない&使い道のない大きな飾り皿、有名絵画の複製品…。恐らく、本人はどれも相当な値段で買ったことでしょう。今でも、デパートや小売店で高く売っているはずです。しかし、以前「人気と相場」という話で書いた通り、需要が無ければ例え100万円で買った品でも古物(二次流通品)として千円すらつきません。この代理人は、家の中の物を合計してある程度の金額を見込んでいたようですが、古美術商として値段を付けられるような品は小物数点のみだったようです。
結局、この業者は全点で数万円という見積もりを出しました。買ったときの値段だけ考えれば、恐らく数百万円はしたであろう品の山をです。しかし、これは古美術商が安く買い叩こうとしている金額ではありません。商品の半分以上は運が良ければリサイクルショップへ無料引き取り~ダメならゴミとして処分しなければなりませんし、売れる物でも大した利益は望めそうもありません。大きな物をたくさん運んだり保管したり処分したりするには、かなりの手間と経費が掛かります。ハッキリ言って、全体を考えればマイナスになるような仕事なのです。
それでも見積もりは請け負ったということで、この古美術商は「数万円」という正直な査定金額を代理人に提出したそうですが、その後相手から連絡は来なかったそうです。この代理人は美術品の価値や二次流通の価格を知らず、見た目や購入金額のみで判断したのでしょう。他の美術商にも話を持ち込んだと思いますが、仕事自体を断られたか同じような結果になっていると思います。
「これは高く買った物だからある程度高く売れる」「いざとなったらこれを売って…」と考えられている品の中には、意外と金銭的価値の無い物があるようです。今や、ゴミを捨てるにもお金が掛かる時代。ここぞという時に売ろうとした品で、逆に処分手数料を取られるというハメにならないよう気をつけたいものです。
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