・美術と仕事
もう4月ですね。私は関東に住んでいますが、近所の桜は既に満開のようです。
春といえば就職シーズン。実は、意外なほどこのページに「骨董 仕事」「骨董 バイト」「オークション 仕事」という検索からこられる方が多くいます(実際は、この時期に限った検索でもないのですが)。美術・骨董商、オークション。そういった仕事をされたい方、関わりたい方も多いのでしょう。
仕事としての美術商。そう言えば、この業界にいるとなぜか「お父さんも美術商だったんですか?」とか、「元々家が骨董屋さんなんですか?」と聞かれることがあります。確かに、息子さんが仕事を継いでいるケースは少なくないようですが、考えみれば美術商のみならず自営業やちょっと変わった仕事(?)というのは「代々」という場合が多いのかもしれません。
と書いている私はというと、親はもちろん親戚にも美術商はいません。何となく「サラリーマンは嫌だから、古美術商にでもなるか…」という、いかにも私らしい無計画でこの世界に飛び込んでしまったのです。当時、就職に関しては売り手市場で結構良い企業からもお誘いを受けたのですが、そういう時に限って天邪鬼な性格が出てしまうんですよね(笑)。美術商になりたいと強く思っていたわけでもないのですが…。
ただ、いま思い返せばもっと早く・10代くらいの頃から老舗美術商で勉強するか、逆にいったん就職してある程度の蓄えと人生経験を積んでから美術商になった方が良かったかな…と、考えることがよくあります。現実的には、子供の頃から骨董品に興味があったわけでもなく10代から古美術商といっても考えられない話ですし、就職したらしたで多分別の人生になっていたでしょうが。後から振り返ればもっと上手くやれる方法もわかるわけで、この仕事を選んだときが一番のタイミングだったかもしれません(美術商を選んで良かったか悪かったかは別として)。
話は変わり、今の時代(美術商に限らず)「物を仕入れて売る」という、極めて当たり前というか原始的な商売で収入を得るのが難しくなってきた気がします。大きく財を成している人を見ると、ITなどの情報関連や株・金融商品などで成功した人ばかり。現実的な「物」を売買して利益を得るには、経費や手間・時間が掛かりすぎるのです。かつてはその手間や時間が仕事において当たり前だったとしても、一方で作業の大部分はパソコン任せ、決済・流通システム(あるいは商品自体)は電子化というケースもある…。そして、便利で楽な方へと基準は変わっていきます。
「目に見えないものを売る」あるいは、「目に見えないものから利益を出す」。こういった経済や仕事にはどこか限界というか破綻が見えてくる気もするのですが、見える商品の鑑定より見えない商品を鑑定できる方が今の世の中「儲かる」のかもしれません。
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コメント
京都もただいま春を謳歌しています。この時期は、人が多い東山を避けて、洛西がのんびりします。
骨董品や美術品はメーカーの工場製品には無い、隠れた「もやもや・むらむら」がありますね。これが人の心をときめかし、引きつけ、いやします。一方サブプライム債券のような金輸商品は、理屈だけの世界です。究極は右脳の商品と左脳の商品というように分かれるのかもしれません。しかしどちらもある程度リスクをとらなければ大きく儲からないところは同じでしょうか。
一芸に秀いでた人は美術品に対してよい目を持つことが往々にあります。このため何かの芸や事業を成した後この世界に入ってもやっていけそうなのでしょうが、なかなか成功者は少ないみたいです。つまり美術商で食うための鑑識眼は、我々マニアとは1枚違うみたいですね。まぁ、生活がかかっている者が一番よく物が見えるということになるのでしょうか。
話が流れてしまったのでこれくらいにしますが、終わりに一句 「この世を 切り替える 桜花 」
Posted by: 雲様
コメント有難うございます。
良い物を見分ける眼と売れる物を見分ける眼はどうも違うようです。ですから、審美眼の優れた人でも美術商として成功するとは言えませんし、極端な話、美術品を見る眼がなくても商売のセンスがあればやっていけるのかもしれません。
本文に書きました通り、いまは「物を仕入れて売る」という当たり前の商売が難しくなってきた時代です。ネットで対話のない売買が増えつつあり、またそういった方が煩わしくないのかもしれませんが、その逆~「このお店で物を買いたい」「この美術商から買いたい」という対話重視の商売に向かう方が良いのかもしれません(私には無理そうですが…)。美術商というのは、ある意味「人を買われている」というところもありますからね。ただ、そういうところを含めて物を買って下さる方も、だんだんと少なくなりつつあるようです。
Posted by: @bijutsubaibai
突然すいません。
45歳大阪在住の主婦です。
20代の頃から美術品に興味を持っており、美術館巡りを趣味としています。
大阪の老松通りも好きでよく散策します。
学芸員の資格もなく大学も文学部卒で特別な知識もないのですが、美術品を扱うお仕事につくというのはもうこの歳では難しいでしょうか?
何かアドバイスを頂けたら大変幸いに存じます。厚かましく申し訳ありません。
Posted by: 赤松朋子様
申し訳ありません、過去の記事でコメントの投稿を見逃がしておりました…。
私も美術関係者が近親にいたわけでもなく、大学でも全く異なる勉強をしておりました。どんな仕事もそうですが、会社を定年退職してから始めて成功する人もいれば、若い頃から始めて失敗する人もいるでしょう。
大手茶道具商などで働く…とかの場合は若い頃からの方がよいのかもしれませんが、年齢は関係ないと思いますよ。端的に言えば、商売として成立させられるかどうか、それだけです。
Posted by: @bijutsubaibai