・2010年の美術売買

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「企画画廊・貸し画廊」を掲載中ですが、年末の記事をアップいたします。

 本サイト「美術売買」ですが、今年はほとんど更新する機会がありませんでした。忙しいという理由より、どうも更新する気分になれなかったというのが正直なところでしょうか。今年は心身ともにどうもスランプ気味で、何とも気合の入らない1年となってしまいましたが、あまり気負わず自分のペースでボチボチと更新していこうと思っています。

 さて、以前掲載した「企画画廊・貸し画廊 その1」で書いたとおり、いま私は古美術品を扱う仕事をあまりしていません。勿論、景気が悪いということもありますが、あらゆる品物が底値で買えるということを利用すれば、商売自体は問題なく成立すると考えています。例えば、店を構えて買いやすい価格の品を並べる~古美術に興味のない若い方にシャレたインテリアや食器としてパッと買っていただくということはできるでしょう。

 しかし、店舗を構えて商売するのは大変な手間と経費が掛かりますし、現実的にやるとなると難しいことです。なにせ私はナマケモノなので、想像するだけでも「ムリ」という感じになってしまいます(笑)。

 私が書くまでもなく、古美術の世界は一生を掛けても追い続けられる魅力があります。しかし、いまの私は「古き物を探す」という楽しみより「新しい才能を探す」「新しい品物を売り出す」という方に仕事としての魅力を感じ始めているところです。埋もれている才能なり品物を探し出すという点では同じなのですが、作家と一緒に価値を作り出していく、あるいは評価されていくところを見るというのが楽しいといったところでしょうか。

 古美術品を扱うか、あるいは新作を扱うか? 私はその主体としての手段(店舗や画廊)を持っているわけではありませんし、今はその考えもありません。しかし、少しは方向性なり目標を考えないといけないかな…と思い始めているところです。

 不況と言われ始めてからもう何年経ったかわかりませんが、その時その時でチャンスやニーズ、あるいは「縁」があるものです。また、以前は「不景気でモノが売れない」と考えていましたが、必ずしもそうではないと実感した1年でもありました。2011年、私自身の仕事や扱う品がどうなっているか? 不安でもあり楽しみでもあります。
 
 それでは皆様、良いお年を。

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コメント

明けましておめでとうございます。昨年は貴重な記事を拝見させて頂きありがとうございました。今年も宜しくお願いします。

自己資金で店を構えるというのは大変だと思いますが、賃貸でも構えないとなると、作品を倉庫業者に預けておくか、仲介業のみとなるのでしょうか。どんな商売の形態になるのか興味があります。

画家や作家も商売っ気のある人もいれば、ない人もいます。プロデューサー的あるいはマネージャー的な仕事になるのでしょうか。

オークションを見ていると不況とはいえ良作には高い値段がついているように思います。

ただ、最近、年配者と若い人の間で嗜好の差が大きくなっている気がします。

更新を楽しみに毎日チェックしているのですが、昨年は確かに機会が少なかったですね。ご多忙の中、貴重なお時間を割いて記事をご提供頂いているだけでも有難いので無理は申しませんが、宜しければ裏美術品売買のコーナーでもお付き合いさせて頂ければ幸いです。

なかなか更新がありませんね。お仕事をかかえながらの運営で拝読させて頂けるだけでもありがたいと思っているのですが、待ち遠しくて仕方ないというのも本音です。

できましたら、裏美術売買の方も拝見させて頂ければ、ありがたいです。

私も仕事柄いろいろな方を相手にしますが、最近はネットの普及?などもあり、知識だけの頭でっかちな人が結構います。「勘弁してくれ」と思う事もしょっちゅうです。
でも最終的には「縁」で繋がったお客さんに支えられて、どうにか商売続けてます。感謝感謝。

>>絵心様

 コメント有難うございます。また、返信が遅れまして大変失礼いたしました。

 美術商の多くは仲介業だと思いますよ。古美術店で、ほとんど開いておらず「あの店はやってるのかな…」と思ってもつぶれないのはそのためで、一般のお客さんを相手にしなくても毎日どこかで行われている交換会での売買で商売が成り立つんです。店舗を持っていないか、倉庫代わり程度に使っている人の方が圧倒的に多い気がします。

 古物を扱う面白みもありますが、新作・新人を見つけ一緒になってプロモーションして行くという面白みもあります。まさにプロデューサーといった仕事ですが、近年の私はそちらの方に興味がありますね。

 オークション落札価格は、そのときの価格は勿論、過去との比較も見るべきです。ある作家の作品が1千万円で落札されたとして、同じ作家の同等作が1年前、3年前にいくらだったかに注意しなければなりません。1000万円、高く売れたじゃないかと思っても、2、3年前には3000万円だったというケースがざらです。

 年配の方と若い方の嗜好の違いについては、かなり前に「世代によるギャップ」という記事を書いているのでご覧下さい。

 なお、裏美術売買につきましては、私的なページで現在読者を募集しておりません。サイトにつきましてももう少し調整したいと考えておりますが、例え多くコメントをいただいたとしても、当方が交流を望む方でなければご遠慮していただいています。ともかく、裏については現在保留しており、現在書いている記事でも「続きは裏で…」という書き方をしないつもりですので、しばらくお待ち下さい。

 また、更新につきましては、いつも書いておりますとおり、あくまでマイペースにさせていただきたいと思っております。サイトを公開しておいて申し訳ありませんが、記事の執筆も当然ながら誰かにお金をいただいているわけではなく、あくまで趣味での更新です。あまりご要望が多くなった場合は、サイト自体の閉鎖も考えております。

>>shuttle様

 コメント有難うございます。

 そうですね、頭でっかちな人、失礼な人、要望だけが多い人、お客様は神様です的な人…とにかく多いですね(笑)。

 私はお客さんとのやり取りは大好きなのですが、器が小さいのでそういった自分勝手なお客さんが大の苦手です。イベント等で商売しなくなったのも、そういうお客さんと売買したくなかったからかもしれません。商人としては失格かもしれませんが…。

ご多忙にもかかわらず、ご返信頂きありがとうございます。

ひょっとして、厚かましいお願いばかりしているので、嫌われてしまったのかなと心配していたところです。

裏美術売買は、現在読者を募集されていなかったんですね。そうとは知らず、申し訳ありませんでした。

さて、交換会での売買で商売が成り立つとのことですが、最終的には誰かお客さんに買ってもらって関わった全業者さんの利益を負担してもらわうことになると思います。

最近、ネットで直接売買という業者さんがおられますが、交換会で複数の業者さんの手を渡らなければ、中抜きができて、双方に都合が良いように思われます。

しかし、見ていると廃業される方もいるようで、ネットでは高額商品が落札されにくいからかなと思っているのですが、どう思われますか。

どう演出するかは古物の扱いでも問題でしょうが、新人の発掘、売り出しとなるとより創造的ですね。面白そうです。

オークション価格は、確かに異なりますね。たまたま激しい競り合いになって高値がついたと思われる場合もありますが、時期的な変化も激しいように思います。

でも、景気の動向を見ていると、昔の価格に戻ることなんてあるのだろうかと思ってしまいます。性格的なものか、どうも売りに回ると弱気になってしまうんですね。

絵心様 お寄せいただいたコメントの公開が大幅に遅れてしまいました。申し訳ありません。

>>交換会での売買で商売が成り立つとのことですが、最終的には誰かお客さんに買ってもらって関わった全業者さんの利益を負担してもらわうことになると思います。

確かに、エンドユーザーとしてお客さんという大きな存在はいます。ただ、「業者間のみ行き来する商品」が思いのほか多いことを考えれば、最終的にお客さんが買ってくれた利益だけで美術業界が成り立っているとばかりは言えないと思うんです。高く買う業者もいれば、上手く拾う業者もいる。そして、その差額で仕事になる…。

「でも、最終的にお客さんが買ってくれなければ業界にお金が入らないじゃないか?」と思われるかもしれませんが、(仕組みは違いますが)株の取引と同様、それを売り買いする人達の取引だけでも一応の成立はするんです。

それに、美術商の全員が美術商だけで食べられているわけではありません。兼業しながら、バイトしながらという人も多くいます。で、そこで稼いだお金で品物を仕入れる。赤字の月は、貯金を切り崩してというケースがあるかもしれません。また、お金を貯めてからこの世界に入ったり、退職金もらってから古美術商になったという方も多いでしょう。その資金(自分の資金)で美術品を買う…。業界に流入するお金は、意外なほど高い割合で「お客さんからの利益」のみではないんじゃないかなと考えています。

>>最近、ネットで直接売買という業者さんがおられますが、交換会で複数の業者さんの手を渡らなければ、中抜きができて、双方に都合が良いように思われます。

これこそが大問題なんです。美術品ではなく、例えば野菜に置き換えてみましょう。最近、「農家の直接販売」などをよく見ます。売る方は流通マージンがかからず、買う方は安く買える。良いことばかり…。

が、そのとき「八百屋さん」「スーパー」の存在が流通から消えていることが分かるでしょう。もし野菜の売り方が全てこれになってしまったら、八百屋さん…つまり農家と消費者の中間にいた業者は廃業です。絵心さんが「廃業される方もいるようで」と書いている通りなんですね。もっとも、野菜に関しては東京のド真ん中に広大な畑があるわけでもありませんし、直接販売する場所自体が限られていて八百屋さんやスーパーは(今のところ)なくなっていません。

が、美術・骨董品ではそれが起きかけています。毎日安価で大量の美術品がネットオークションに出るようになりました。いくら1点物が多い世界とは言え、大量に流通すれば相場が下がるのが経済です。よほどの品でなければ、本当に安値で取引されるケースが多くなってしまったんですね。

「安く買えて良かった…」と思える方もいるでしょうが、気がついたら「自分が買ったこの品、昔は高かったんだけど今じゃ1万で買えるよ」「いまネットオークションに出しても5千円だね」と嘆いているケースも少なくないと思います。

何でもかんでも中間を抜いてしまう、簡略化してしまうというのは、便利な反面大きな弊害も生み出すと思います。その中間で働いていた人・利益を上げていた人もいれば、品物の価値そのものを上げていたケースもあるんです。特に美術品やブランド品は、「価格」という評価がある程度のステータスになっている気がするのですが、それを崩してしまっては…という気がしないでもありません。グッチのバッグを3000円にしてしまっては、ブランド品としてのグッチを誰も買わなくなってしまいます(雑貨としては買うでしょうが)。

それに、店舗や交換会での取引や情報交換がないと、美術商もお客さんも育たないんです。目の利き方、良いお店作り、会話…。こういった有機的なものをなくして、それが果たして美術商なのか? と思ったりすることもありますね。

>お寄せいただいたコメントの公開が大幅に遅れてしまいました。申し訳ありません。

とんでもありません。ご多忙の中、大変興味深いご回答を頂きありがとうございました。

>兼業しながら、バイトしながらという人も多くいます。で、そこで稼いだお金で品物を仕入れる。

同じ絵でも高く評価する人もあれば、それほどでない人もいる。その差から、業者さんのいわば身銭が入ってくることになるんですね。面白いです。

ところで、高く買う方の中で、自らが趣味にされている場合というのはどのぐらいあるのでしょうか。

以前、切手商の方とお話したとき、「自分が集めていたらこの商売はできない」「何故なら、自分が欲しいものは人も欲しいから」「そういうものを売らなきゃ利益が出ません」と笑いながら言われたのですが、一方である画廊のご主人が取り扱い作家の作品で気にいったものをご自分のコレクションにされているのを見たことがあります。

>美術・骨董品ではそれが起きかけています。毎日安価で大量の美術品がネットオークションに出るようになりました。

毎日やシンワのような老舗のオークションの手数料に比べると、ネットオークションは安いですね。決済も速い。

最近では、シンワ辺りは出品が減ってきているようにも思います。

また返信が遅れてしまいました(汗)。

>>ところで、高く買う方の中で、自らが趣味にされている場合というのはどのぐらいあるのでしょうか

コレクションしている方もいるのでしょうが、基本は仕事として買っているケースが多いのではないかと思いますよ。

別の考えというか、私は「仕事で自分が扱う品」がコレクションなのかな…などと考えたりもしています。例えば魯山人なら魯山人で、「好きだから買う」みたいなところがあるんですよね。で、たまに眺めてみたり。

仕事ですから最終的には売りますが、「これ、売るには惜しいな…」なんてこともありますよ。もし余裕があれば手許に置いておくのもありでしょうが、そうも行きません。それに、自分の選んだ品を喜んで買ってくれる、オークションなどで高く評価されると、気持ちよく手放せたりするものです。

そして、「あの人は○○をよく買っていて詳しい」「○○なら、あの人の店に行けばあるんじゃないかな?」という美術商としての評価が形成されていくのだと思います。

大手ネットオークションと老舗オークションハウスでは手数料・決済方法で違いはありますが、信用度も違いますからね。基本的には「システムを貸し出しているだけ」「取引はユーザー同士」としているネットと「品物は一通りチェックする」「運営会社として取引にルールを設けている」オークションハウスとでは、手数料の意味合いも大きく違っています。

むしろ大手ネットオークションの手数料こそ、「ユーザー任せ」にしては法外…と私は思っていますよ。

何度も丁寧にご回答頂きありがとうございました。

「自分の選んだ品を喜んで買ってくれる、オークションなどで高く評価されると、気持ちよく手放せたりするものです」というお話、よく分かります。

大事にしてくれそうな人、趣味の合う人は譲りやすいと思います。

ネットオークションは信頼度は確かに低いですね。よほど見慣れた作家のものだけに絞っています。

老舗オークッションの場合、50万以下くらいの落札価格になると、手数料は15%ですし、送料も100万以上の作品を送るのと全く同一手続で高くつくのもつらいところです。特に10万未満で送料が1万円近いというのが痛いです。

私は、オークションで買ったら自分で梱包させてもらって発送しちゃいます(笑)。

もっとも、これも何かと大変だとは思いますが、オークションの落札手数料15%は仕方ないかな…とも思っています。

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