・企画画廊・貸し画廊 その3

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 一言で「企画画廊」と言っても店舗によりその運営方法は異なるかもしれませんが、基本的にはオーナーが「これは」と目を付けた作家の作品を紹介・販売するのが仕事となります。

 面白いのは、声を掛けられた作家の反応が様々なこと。仕事ですから当然そこには「商売」があるわけですが、美術商を信頼せず警戒しまくっている作家、「あのー、こちらはいくらお出しすればよいのでしょうか?」と、貸し画廊と区別がつかない作家。いろいろな反応があります。

 そして、もう1つ書かなければならないのは「企画画廊の手数料」でしょう。企画画廊で絵が売れた場合の手数料、皆さんはいくらくらいだとお考えでしょうか? 大抵の場合、企画画廊の手数料は50%前後です。60%かそれ以上というところも少なくありません。60%とすれば、10万円で絵を売ったとして6万円が画廊、4万円が作家。50%としても半分が作家で半分が画廊となります。

 この手数料を聞いて、中には疑問や不信感を持つ作家もいるようです。まあ無理もありません。自分が描いた絵を売って半分が画廊の儲け。いや、普段10%、15%というオークション手数料に慣れている私も、その手数料を聞いて一瞬驚いたのを覚えています。しかし、これは私としては恥ずかしい「計算間違い」でした。

 前回の記事で書いたとおり、企画画廊は賃料で商売をしているわけではありません。月10万なり20万、あるいはそれ以上の家賃を払っている画廊もありますが、それを作家に払ってもらうわけではないのです。しかも、DM制作や広告出稿も、多くの場合は画廊持ち。さらに、作家とのやり取りや作品の引き取り、展示や接客・配送といった「労働に対する賃金」も、当然ながら作家の負担ではありません。電気代や電話代・交通費といった経費もかかります。これは企画画廊の話に限ったわけではありませんが、「品物が売れてやっと粗利が出る~そこから経費と労働の対価を得られる」わけです。

 こう考えて初めて、50%かそれ以上という一見高い手数料が企画画廊では妥当な手数料とわかるわけですが、特に若い作家の中にはまだ「仕事をしたことがない人」も多く、「利益→そのまま儲け」と考えてしまう人もいるようです。

 そして、「仕事としての絵画取引」がわからない作家と組んでしまうと、画廊側も苦労することになるのです。

※その4に続きます。

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コメント

私もよく区別がつかない一人なんですが、では全く売れなかった場合、貸し画廊は賃貸料だけは取れるが、企画画廊は全く取れないということなのでしょうか。

広告、運営、配送、いずれも人件費が嵩むので、そのくらいになるんですね。実際に事業をやったことがないとピンと来ないかも知れません。

ところで、企画画廊で一度展覧会をすると、その画廊の作家という暗黙の契約がつくと聞いたことがあるのですが、期間中は信義則違反かと思いますが、期間終了後も他画廊で個展を開催できなくなってしまうのでしょうか。

拘束力というか、そういうものはどうなっているのでしょう。

返事が遅くなりまして大変失礼いたしました。

>>では全く売れなかった場合、貸し画廊は賃貸料だけは取れるが、企画画廊は全く取れないということなのでしょうか

その通りです。場所を借りていれば賃料、経費、そして何より働いた分の対価が0、つまり、大損の上にタダ働きということになりますね。こういった仕事は「好きでなければできない仕事」だと思います。

いただいたコメントの後半ついては(文章を読んでいただければお分かりとは思いますが)、まさにこれから書くことです。もう少々お待ち下さい。

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