・スニーカーの鑑定事件に思うこと
以前「美術商と信用度」という話を書きましたが、ちょっと気になるニュースをネット記事で読みました。
その記事とは、いま人気となっているスニーカーの真贋について、偽物スニーカーを鑑定に出したら「本物」と判定された…というものです。
その結果、オンライン取引大手のアプリが、一時取引中止になる事態に。また、複数のサービスへ鑑定依頼したところ、5社中3社が「本物」と鑑定したとのことでした(詳しくは記事内容をご覧下さい)。
私は、スニーカーについて全く知識がありません。なので、この業界がどうなっているのかとか、鑑定ポイントがどうなのか等、不明な点は多々あります。が、記事によると、この告発をした人が「素人の僕が見比べても(真贋が)分かるくらいですから」と書いているくらい、詳しい人なら見分けるのが難しくない品だったようです。ましてプロなら本来「一目」というレベルだったのでしょう。それが、5社中3社も「本物」と鑑定してしまうという結果に…。
中でも「月間400万人以上が利用」「国内No.1」と標榜する大手サービスが本物と鑑定してしまったことに衝撃が広まるとともに、一部のユーザーからは「やっぱり…」という声もあったのだとか? 以前から、そのサービスの鑑定レベルに疑問を持っている人もいたのでしょう。
この話は、スニーカーという商品ジャンルの世界で起こった事件です。が、「古物取引」「鑑定」といったことを考えれば、古美術品の売買と取引形態そのものは同じ。そして今回問題になったことの一因は、以前私が記事に書いた危惧と大きく重なっています。
それは、鑑定人や(店舗やサービスの)責任者に目利きの能力がなくても、ホームページやアプリの体裁さえ整えてしまえばweb上では1流の店(古物商)に見えてしまう、そしてそれを信頼してしまうユーザーがたくさんいる…ということです。「このネットショップは、このジャンルで日本トップ」「このアプリは利用者も多いし間違いない」。「現代美術品の販売ならこのページが有名」。 しかし、見栄えの良いホームページなりアプリなりの向こう側にいる鑑定人・責任者が誰なのかは分かりません。中身を見たら「全くの素人」「ロクに鑑定せず(鑑定できず)委託販売して手数料をもらってるだけ」ということもありえるのです。
スニーカーと古美術品ではジャンルそのものも鑑定ポイントも違うでしょうし、業界自体が別世界なので、記事をそのまま古美術業界に当て嵌めるわけにはいかないかもしれません。ただ、今回の事件が古美術取引においても教えてくれるものは大きいでしょう。ネットオークション、ネット通販等、顔の見えない相手との取引も多くなっていますが、もう一度購入前に「モノが大丈夫か?」を確認すると共に、「売っている人(サービス)が信頼できるのか?」「(実際にではなくても)相手の顔が見えるような安心できる取引か?」を確認すると、トラブルに巻き込まれにくくなると思います。
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