・全てコピーだったオークション

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 一般の方が参加できる常設型オークションが出来始めた頃の話です。あるオークション会場で、中国陶器オークションが開催されるとのことで出かけました。

 中国の陶器は、「本物」という前提を置いて考えても種類・価格ともまさに「ピンからキリ」まであります。以前書いたように、2千年くらい前の品でも数万程度の物、官窯と言って皇帝直属の窯で作成された数千万~億単位はするような物まで様々。当日、どんな商品が出るのか楽しみにして下見会の会場へ向かったのですが…。

 受付でもらったペラペラのカタログを見て驚きました。高額商品の名前ががたくさん並んでいるではありませんか。これらの品は滅多に出ない~出たとしても高額で取引される商品だからです。しかし、その驚きは喜びではなく「がっかり」というか「やっぱり」という感情にすぐ変わりました。美術商たる者、モノを見て判断しなければならないところですが、商品を見るまでもなくコピーだとわかったからです。

 下見会場には、一点だけでも出てくるのが珍しい高額の中国陶器がワンサカ登場。が、予想落札価格は、なぜか中途半端な10~20万前後の品ばかり。本物なら目玉が飛び出るような高額の商品が、すべてこのくらいの値段に設定されていました。行ったついでですから物を見ましたが、まさに「超名品」のオンパレード。この手の高い焼物は、「陶片」と言ってカケラだけでも高く売買されますが、会場に飾ってある商品はほとんど全て「完品」「保存状態超良好」状態でした…。

 楽しみにしていたオークションの商品が全てコピーで本来なら憤慨するところですが、私は別の意味で面白く、結構長い時間会場を見学していました。品を手に取ってシゲシゲと見ているご老人もいますが、買おうとしているのでしょうか…。見飽きたところで受付に置いてあったペラペラのカタログをお土産に2、3部もらい、会場を後にしました。

 オークション本番には行きませんでしたが、あまり事情を知らず「本物」「歴史ある物」と思って買った方がいたとしたら不幸なこと。始めからコピーと断り工芸品としてオークションするならともかく、ペラペラのカタログには「宋」とか「明」とか時代までキチッと書かれていたからです。

 そのオークション会社によるオークションはその後もしばらく続きましたが、中国陶器オークションは恐らくその一度きりだったと思います。始めからわかっていて開催したのか、オークション会社も知らなかったのか…。今でも手元にあるペラペラのカタログを見る度、そんなことを考えます。
『裏美術売買』にて、このカタログを期間限定で公開いたしました。

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コメント

全てコピーだったオークション話しを楽しく読ませていただきました。

中国の知人より。
邢良坤の陶器作品を日本で売りたいという話しがあります。
お答えいただけるようであれば。
邢良坤の陶器作品は日本で売れる見込みはあるのでしょうか?

 コメント有難うございます。

 ご質問ですが、あまりに漠然としていて何とも答えようがありません。(美術品に限らず)扱う品物が売れるかどうか事前にわかれば、商売する側としてこんな楽なことはないのですが…。
※別記事にコメントされていたので、当該記事に移しました。

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