・苦労して運んだ壺は…
古美術商による交換会での話です。巨大な○○焼の壺が出てきました。
これだけ大きな陶器。勿論、車での運搬ではありますが、自宅から持ってくるのも一苦労でしょう。台車を使って会場付近までは運べますが、階段などの障害物があれば手で持って運ばなければなりません。汗だくになったその古美術商は、やっと壺を運び終えました。
普通、古美術商の会で競りにかけられる商品は、お盆に乗って流れる~各自が品定めするのですが、大きくて移動できない物は会場の中心・あるいは隅っこに置かれます。その壺も会場の隅に置かれましたが、いよいよ競りにかけられるため中心の方へ運ばれることになりました。出品者も「いい物だよ~」などと声を出しながら重たそうに運んでいきます。高額商品というわけではないものの、時代・味もあってまずまずの品。会主が発句(オークションの開始価格)を決めるため商品を品定めしていたのですが、次の一言で出品者の顔が青くなりました。「これ、割れてるよ」。
時代のある品ですので多少の欠け、割れ等はその分を考慮して値段が決まります。が、運の悪いことにその品に入ったヒビは、かなり大きかったようです。しかも、大きくて長いヒビの割りに、パッと見には確認できないようなキズでした。どうして気が付いたかというと、会主が念のため壺を叩いてみたからです。叩けば一目(一聴?)瞭然、「ガスっ」というキズ物特有の音がします。
その壺がどの時点で割れたのかは知りませんが、顔色の変わり方から恐らく出品した方はそれを知らずに出したのではないかと思います。結局、その古美術商は苦労して運んだ巨大な壺を競りにかけることなく引きました。この状態では、二束三文になってしまうからです(買い手もつかなかったでしょうが…)。
ちなみに、薄くて堅い陶器にキズが入っている場合、叩くと「ピーン」と震えて響くような音がする場合もありますし、大きい物や土物は「ガスっ」という音がしたりします。また、キズではありませんが、焼き具合の甘い作品も叩いて調べることができます。もし、同じ作品の5客組、伊万里等の組物がありましたら、叩いて音を比べてみると良いでしょう。キレイに焼き上がっている物は、大抵良い音がするものです。
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