・隣の店は…
ある骨董ショーでの話です。私は客として遊びに行ったのですが、知り合いの出店業者を見かけては挨拶したり雑談したりしていました。
しばらく歩き回っていると、中国骨董を専門に扱う顔見知りの古美術商を発見。しかし、顔見知りとは言っても本当に顔を知っているという程度で、その方が品を売っている姿を見たのは初めてです。高額商品は店の飾りにいくつかといった程度でしたが、骨董ショーらしく買いやすい品、しかし真面目な品が並んでいます。が、どうも店主の顔色が優れません。骨董ショーも始まったばかりですし、まだ売り上げ云々という時間帯ではないのですが…。
店主が目を向けた隣の店を見て原因がわかりました。もう一店中国陶器の店が出ていたのですが、まさにコピーの山。そこは贋作を売る店だったのです。中国陶器に詳しい方なら手に取らなくとも一発で見抜けはするような品ですが、よくこれだけ運んだなぁ、というくらいワンサカ「超名品」を並べていました。どうやら、以前書いた中国陶器のオークションに出品された物とほぼ同じような品です(どこかで大量に作られているのでしょう)。中国物ということで同じエリアの出店となったようですが、こういう店の隣というのは嫌なもの。心情的に嫌というのもありますが、ある程度目の利く方はこういう店に近づかないのです。人が近づかないような店の隣に出店、しかも物の違いはあるにせよ扱っているのが同じ中国物ということを考えれば、店主の顔色が悪いのも納得いきます。
私はお付き合いで、そのお店から小品を一つ買いました。私が気を遣ったと思ったのか、その方も買いやすい値段を提示してくれたと思います。発掘物で金直しもある古陶器でしたが値段の割りに良品。気に入ったので、今でも自宅に飾ってあります。
何度か中国陶器の話を書きましたが、正直コピー・ニセモノの多いジャンルであるということは否めないでしょう。ただし、信頼の置ける美術商を探し、自分に見合った物を買う分にはそれほど問題は起きないのではと思います。1万円や10万円と言われれば「コピー」と思えても、100万円と言われれば値段につられて「本物じゃないかな?」などと思ったりするもの。本来なら数千万の物が、当然100万円のわけはありません。自分の目を信じて踏み込む勇気もたまには必要ですが、値段や欲に惑わされず冷静に「物」を見れば、よほどデキの良いコピーでない限り見分けられる場合がほとんどです。また、普段から相場を知っておく、美術館で本物を飽きるくらい見ておくということも必要なことでしょう。
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