・これだからやめられない その2

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 前回の続きです。偶然にも私とオジサンの落札品は隣り合わせに集められていました。そこで、荷造りの際それとなく声を掛けてみることにしたのです。

「あのー、この花瓶だけ売ってくれませんか?」「おー、いいよ。3千円で買ったから3千円かな」「ここに2千円って書いてあるじゃないですか(落札された品には、落札者の名前と金額の札が付いている)。他の商品が利益ということで、2千円で譲って下さいよ」「あー、2千円で買ったんだっけ。いいよいいよ。この花瓶ね、はい。うへへ」。

 こうして、アッサリ目当ての品だけ買うことができました。このことから、オジサンが山の中に1点だけあったソコソコ価値ある花瓶を狙っていたわけではないということが分かります。コップや他の花瓶と共に、露店かどこかで売るつもりだったのでしょう(露店にそのまま並べられていたら、私の買った花瓶がちょっとした「掘り出し物」ということになります)。2千円を受け取ったオジサンは、ちょっとニコニコ顔でした。2千円で買った一山のうち、1つの品だけで2千円。残ったコップや花瓶の山が、瞬時にして「買値タダ」となったのです。後は商品を10円で売ろうが100円で売ろうが、もう損はありません。そして、笑顔のオジサンは荷造りしながら訛り混じりにポツリと言いました「これだからやめらんねぇなぁ…」。

 オジサンから見て、私はアホに見えたことでしょう。「他にもたくさん商品が付いているんだし、競りの時に声を出せよ」「2千円の山の中の1つを2千円で買うとはねぇ」。心の中で、こう思ったかもしれません。しかし、表情に出さないものの私は私で大満足。ちょっと欲しかった美術品を「いらない物を処分した形」で手にすることができたのです。当初考えていた金額の半分くらいで買えましたし、梱包・持ち運びも楽々。他に私が落札した陶器なり古美術品なりは全て箱に入っていたので、荷造りも早く終わりました。たくさんあるコップや花瓶を笑顔で包むオジサンを前に「有難うございました。お先に失礼します」。

 箱も無いですし高額商品というわけでもないですが、その花瓶は15000円ですぐに売れました。「ついでの交渉」で手にした品と考えれば、1万チョイの利益は悪くありません。この花瓶、買い手のコレクターから「箱無でいいから売ってくれ」とお願いされそのまま売りましたが、作者に箱書してもらってから売れば、もっと高く売れたことでしょう。しかし、この金額の品では箱書してもらう手間・経費と、手間をかけた分の利益が意外と同じくらいになってしまいます。それでも手間に関わらず箱書してもらうのが理想なのですが、幸い買われた方は作者と面識があるそうで、直々に箱書をいただくとのことでした。量産品の花瓶やコップの山に埋もれていたこの作品も、面目を保ってくれることでしょう。

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