・上手く付き合う、上手く買う
この仕事を選んでおいて書くのもなんですが、美術商は個性の強い方が多いです。勿論、職業に関わらず人によって性格は千差万別なのでしょうが、物に対する「こだわり」を持った方がこの仕事をしていると考えれば、なんとなく頷けることでしょう。
そういった美術商に「困るお客さんは?」と聞いたとき、返ってくる答えの多くは「とことん値切る人」だと思います。いまだに「骨董屋というのは、値段を高く付けている」「骨董屋というのは、人の足元を見ている」と思われる場合もあるようですが、実際この仕事で生活するのは大変なこと。私達は、運良く安く仕入れて相場で売った結果大きく儲かったという品以外は、みなさんが思うほど利益を乗せていないのです。「1万円」と付いている商品をいきなり「5千円で売ってくれ」と言われても、相手にしようがありません。人によっては「二度と来るな」ということになるでしょう。美術商の物に対するこだわりは、同時に値段(値踏み)に対するこだわりでもあるのですが、目の前で大きくそれを否定するのは考え物です。
私はどちらかというと裏表なく正直に、正札(付けている価格から値段を上げたり下げたりしない)で売りたい方です。性格的に値切り交渉をしづらい方もいるでしょうし、本来ある程度相場のきちんとしている骨董の価格が「骨董品の値段なんてあってないようなもの」と思われる原因になっていると考えるからです。コンビニやスーパー、デパートで値切る方は少ないと思いますが、こと美術・骨董品に関しては必ず値切り交渉となります。よくよく考えれば、売る方にしても買う方にしてもあまり好ましくないことであると思うのですが…。
しかし、一方で値切り交渉を楽しみにしている方もいるでしょうし、そういった「駆け引き」「ゲーム性」に惹かれている方がいらっしゃるかもしれません。また、現状では必ず値切ってくるというお客さんの対応から、美術商側としても「値切り分」を上乗せしているのが正直なところでしょう。
私自身買い手側になることも多いわけですが、うまく付き合うコツ、安く買うコツは、やはり売り手に好印象を持たれることだと思います。美術商は扱っている物に「こだわり」があると先程から書いていますが、例えば品揃えやお店の雰囲気を褒めたり、感想を言うなりしてそういった業者気質を逆手に取るのも一つの方法。「お客さん」ですから特別に気を遣う必要はないのですが、売り手に好印象を持たれて安く買えるなら「勝ち」でしょう。
忙しくない頃を見計らっていろいろ話してみる、何度か通って安い品を1、2度買ってみる…。お互い親近感が出た所で目当ての品を交渉すれば、もしかしたら相手の方から値を下げてくれるかもしれません。そうでなくとも、値下げ交渉はしやすくなるでしょう。「こだわり」を持った人は一方でサービス精神旺盛な人も多く、良いお客さんには安く売りたい、良い品を売りたいものなのです。また、それ以上の付き合いになれば、探し物を引き受けてくれたり、趣向に合わせた美術品を店頭に並べてくれたりもします。
なお、値切りづらい場合や値切りに慣れていない場合、いきなり値段を言ってしまう~「○○円にして下さい」等は逆効果になる場合があります。大きく外れた金額を言ってしまったら、先程も書いた通り「その人の値段(値踏み)」を否定することになりかねません。無難に行くなら、笑顔で「ちょっとお安くなりませんか?」とか「おいくらになりますか?」と言って、相手に値下げを任せてしまう方が良いでしょう。下がらない場合もありますが、何度かこういった交渉をするうちに値引きの仕方もわかってくる~具体的な数字を出しての交渉もできると思います。
今回は値切りに関して書きましたが、ともかく「人と人」ですから普通に接していただければ問題はありません(勿論、美術商側も良識を持って接しなければなりません。売る側として、常に気をつけたいものです)。なお、売り手側の話としては、お店に入る際や商品を触る際、一言声を掛けていただけると好印象を受けるものです。また、これは注意すべき点ということですが、お店や骨董市で肩にカバンをかけたりリュックを背負っている方を多く見掛けます。商品と接触して事故になるケースも何度か聞きましたので、店内や骨董市の会場を移動する際は、手持ちにされた方が良いでしょう。
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コメント
こんばんは。
わたしは骨董市で必ずと言ってよいほど値切ります。そんなとき、「笑顔」「若い」「女」は得をする条件だな、なんて思います。(笑)
「値切った」という満足感もさることながら、お互いに気持ちよい売買、という理想を頭に置いておかないといけないですね。店の主人に笑顔で見送ってもらえると嬉しいことを思い出しました。楽しく買い物をするためにも、よい客を心掛けたいと思います。 とはいえ安物しか買えませんが・・。
Posted by: ハギワラ様
コメント有難うございます。
>>「笑顔」「若い」「女」は得をする条件だな、なんて思います。(笑)
はい、全くその通りでございます…。
品物を買う際、やはり私も値切って買っています。全ての業者がそうとは言いませんが、多くの業者が値切り分を上乗せている現状では仕方ないところでしょう。
「お客様は神様」とばかりお金を叩きつけるようなお客さんもいますが、ずいぶん損をしていると思います。 「よい客を心掛けたい」と思って品物を買われるハギワラ様には、きっと良い事があるでしょう。人やお金、物の縁~流れというのは、そういうものです。
Posted by: @bijutsubaibai