・駄菓子屋のお婆さん・パン屋のお姉さん
この記事を投稿している「駄コラム」というカテゴリータイトルは、「駄作」や「駄文」という言葉から何も考えずパッと付けたものです。 しかし、「駄」という漢字を見て一番連想される言葉は、もしかしたら「駄菓子」かもしれません。
ここは東京・御徒町。「アメ横」でおなじみの買い物エリアです。ある大型食料品店の一画に駄菓子を売っているお店があり、子供の頃から駄菓子好きの私は懐かしさからたまに買い物をしていました。集合店の中なので街の駄菓子屋という雰囲気ではありませんが、店にいるのは当然「駄菓子屋とセット」とも言えるお婆さん(とオバサン)です。
「ラメック」や「ライスチョコ」「マルカワのフーセンガム」等を、手持ちの小銭500円以内になるよう計算し、カゴに入れレジへ。レジと言っても、お婆さんの計算はソロバンです。熟練しているとも適当とも思える手捌きを見ていると「ハイ、510円になります」。「?」。確か500円以内になるよう計算して買ったはずだから470~80円くらいになるはずですが…。まあ大した金額でもないし、何も言わずに慌てて取り出した千円札と10円玉で支払いました。
それからしばらくして、またその店へ。普通の駄菓子屋と違い仕切りの無い集合店の中なので、私くらいの歳でも何となく入りやすいのです。また500円以下になるように買ったのですが、「ハイ、530円です」。うーん、足し算ですからそんなに難しい計算でもないのですが、私はまた何も言わずお婆さんにお金を払いました。レジはあるものの、無視してソロバンで計算しているのでレシートなんて出ません。頼んだところで、まとめての金額「530」円と打ったレシートをもらえただけでしょう。
そういったことが4、5回くらいあったでしょうか? が、私は毎回何も言わずに支払いました。本来ならもう一度計算してもらうところでしょう。金額は少なくとも、これだけやられたら注意するのが筋なのかもしれません。が、現在「絶滅の危機」に瀕している駄菓子屋の現状、1つ10円・20円の物を売って生活しているそのお婆さんを見ると、私は何も言うことができなかったのです。このお婆さんの行為は「狡猾」なのか「困窮の末」なのか…、と一瞬考えてやめました。勿論、合計金額をごまかしているのだから良いも悪いもないでしょう。しかし、そこまで考えるのが何だかつまらないことのように思えたのです。私は、その駄菓子屋さんが長く続くようにと願いながら、いつしかお婆さんの「要領の良さ」を楽しんでいました。
話は変わって、こちらは街中でよく見かけるパンの大手チェーン店「A」。以前、私は昼食としてここのパンをよく買っていました。買うパンは大体決まっていたのですが、この店も計算と合わないことが多いのです。計算しているのはバイトのお姉さん(複数)。パンにバーコードが付いている訳ではありませんから、種類を見て金額をレジに打ちます。が、あるとき3日間同じ組合わせのパンを買ったにもかかわらず、3日連続合計金額が違いました。給料は時給でしょうし、コンピュータ管理のレジを通しているわけですから差額が直接自分の懐に入るわけでもありません。単にいい加減な計算をしているということなのでしょう。
3日目、私はさすがにもう一度計算してくれと言いました。結果、多く支払った10円が返ってきただけというある意味恥ずかしいクレームになりましたが、どうやら2日目にはそれよりも30円くらい多く取られていたようです。以前から何となくこの店の計算ミスには気付いていましたが、金額も離れていなかったし面倒なので声を掛けませんでした(なぜか、合計金額が下になることはほとんどなかったのですが…)。しかし、同じ品で3日連続となれば、面倒くさがりの私でもさすがに指摘したくなります。
金額云々より、私は「適当」「無責任」になり始めている日本人の姿や仕事を見るような気がしました。いや、まだ年配という歳でもない私(多分)がこんな事を言う資格はないのでしょう。しかし、古美術商の仕事をしながらいくつも目にしてきた「過去の品物」を見れば、そう遠くないかつて日本人が、細やかにして配慮の行き届いていた仕事、責任感を持った仕事をしていたというのがわかろうというものです。美術品のみならず、オモチャにしても工業製品にしてもそうでしょう。形の残らない事務や計算といった仕事もそうだったに違いありません。
どちらも数十円の話ですが、寸借詐欺を見逃して単なる計算ミスの方に怒りを覚えるのは、本来変な話でしょう。しかしこの駄文をご覧になった方には、なんとなく私の心象が察していただけたのではないかと思っています。
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